ステンレス鋼(Stainless Steel)とは、合成成分として10.5%以上のクロムを含有し、表面に「不動態被膜」を形成して不錆性を維持する合金鋼です。
耐錆、耐酸と耐熱性を持つ合金鋼として知られ、その特徴を生かし海洋、化学プラント、サニタリー関連、原子力にも使用されております。
一般的には、ステンレスは錆びないという先入観があると思いますが、ステンレスでも色々な鋼種があり、正確には錆びにくいという表現の方が適切と思われます。
当社ではステンレス(オーステナイト)の代表的な鋼種である SUS304、SUS316、SUS316L、SUSXM7をメインとして他鋼種にも挑戦し続けています。

主なステンレス鋼の区分

1.オ-ステナイト系

ステンレス鋼のうちでも最も広範囲に又、大量に使用されていて 代表鋼種はSUS304で、18(クロム)8(ニッケル)とも呼ばれています。
用途は建築から一般化学設備、家庭用品の食器のスプーン、フォーク等にも使用されています。
多くは非磁性。

2.マルテンサイト系

代表鋼種としてSUS403(通称13クロム)高強度、高硬度が要求され又、高温で使用される機械部品に用いられます。
焼入焼きもどしにより強度アップの特性が生かされ、ステンレスの耐熱鋼といえます。
強磁性。

3.フェライト系

代表鋼種としてSUS430(通称18クロム)13クロムより耐食性に優れ、低価格なので広く使用されクロム系では

生産が最も多く、用途としては家庭の流し台が知られています。強磁性。

ステンレスの磁性について

SUS304・SUS316・SUS316L(オーステナイト) 等、オ-ステナイトステンレス鋼は通常非磁性ですが、2次加工において強加工部
(例えば、切断・曲げ・絞り・転造ネジ・切削・加工等)や溶接部が磁石につくことがあります。

この理由は、オーステナイト層の一部が、その加工でマルテンサイト層に変化、又溶接によりその部分にフェライト相が生成したためです。
J I S では磁性を数値で規定しておりませんので、当社では透磁率を専用器(透磁率計測器)で測定可能です。

実用上は通常、問題になりませんが、わずかな磁性でも問題にする精密電子部品では、多少の冷間加工を受けても磁性が生じない高Cr、高Niの鋼種を選択する必要があります。
又、耐食性への影響は、一般的な環境では問題ないといえます。
実際、冷間加工を受け、磁性を帯びた状態で使用されている事例は種々あり、多くの場合問題になっておりません。

しかし、特殊な環境では冷間加工により変化(マルテンサイト相)が応力腐食割れに影響を及ぼすことや、表面の加工マルテンサイト部から優先的に孔食が発生する場合もあります。

ステンレスの焼付きについて

SUS304・SUS316・SUS316L(オーステナイト) 等、ステンレスねじの締付き、取り外しに関しては、ステンレス鋼種、原材料の特性から締付け時の焼付きが問題視されてきました。
焼付きクレームは、まだ技術的に未解決な分野を残し、この現象がステンレスねじの大量普及のネック一部のとされてきました。

「焼付き防止と軸力の安定」は現在も研究テーマとされています。

現在、焼付き原因には次のことが考えられています。

  1. 摩擦係数が大きい(ねじのかみ合い面での摺動抵抗が大きいので発生量が大きい)
  2. 熱伝導率が小さい(ねじのかみ合い面で発生した熱が発散されにくく局部的に高温になりやすい)
  3. 熱膨張係数が大きい(ねじ山の膨張によりねじのかみ合い面の接触圧が高くなり摺動抵抗が増加するほどステンレス鋼の特性により焼付きを起こしやすい)

これにボルト・ナット締付けの悪条件(ボルト・ナットの座面の平行度が保たれていない場合や過度の(締付)が作用し、かじり(焼付)発生の頻度を大きくするものと考えられています。

対策

厳密に言えば締め付けが始まった時点より焼付けが発生しています。

ねじ面の摩擦係数は次第に増加することから締め付け終了まで次のことを励行をお勧めします。

  1. 締め付け対象物に対し平行度を保つようにして下さい。
  2. なるべく小さな円でネジ込んで下さい。
  3. ボルト・ナットの表面にコート加工を施すと一層有効です。
  4. ボルトかナットのどちらかの材質硬度上の変更を行うと効果的です。

参考資料はお問合せ下さい。